「今日は映画でも観ようかな」と思い立ってAmazonプライム・ビデオを開いたものの、サムネイルの海に溺れてしまい、結局何も観ずにスマホを閉じてしまった……。
そんな経験、ありませんか?
こんにちは、映画好きが高じて年間300本以上の作品を鑑賞している、サイト管理人の「ポップ」です。
メジャーな超大作から、タイトルも聞いたことがなかった隠れた名作まで、来る日も来る日も映画の世界に浸っています。
そんな私が今回、自信を持ってピックアップするのは、Amazonプライム・ビデオで配信中の映画『流浪の月』です。
最初に正直にお伝えします。
この映画、上映時間は約150分(2時間30分)あります。
「ちょっと長いな」と感じましたか?
その気持ち、よく分かります。
私も再生ボタンを押す前は、少しだけ覚悟がいりました。
しかし、エンドロールが流れる頃、その長さは「必要な時間だった」と確信に変わりました。
この映画には、時間をかけて積み上げなければ到達できない、ある種の「境地」があるのです。
もしあなたが、「今日はただの暇つぶしではなく、心の奥底に何かが残るような、濃厚な映画体験がしたい」と思っているなら、この作品は間違いなくその期待に応えてくれます。
ネタバレは一切なしで、なぜ今あなたが『流浪の月』を観るべきなのか、その理由を語らせてください。
【作品データ】
- 主演: 広瀬すず、松坂桃李
- 主な共演者: 横浜流星、多部未華子
- 上映時間: 150分
- 監督: 李相日(『悪人』『怒り』)
李相日監督作 (主演:妻夫木聡、深津絵里)のネタばれナシ感想はこちら
あらすじや作品情報など、正確な情報を記載するように注意しておりますが、何分個人で運営しているため、誤りや見落としがあるかもしれません。考察は映画の解説ではなく、わたし個人の感想からきているものです。あらゆる基準がわたしの主観的な判断のよるものです。以上をご了承の上、読んでいただけると幸いです。
『流浪の月』が描く社会と個人の真実

この映画を観始めると、まずその静けさと、画面全体に漂う湿度の高さに驚かされるかもしれません。
物語は、ある「誘拐事件」のその後を描いていますが、それはサスペンスドラマのような派手な謎解きではありません。
社会が勝手に貼り付けたレッテルと、当事者たちだけが知っている真実の乖離(かいり)。
その息苦しさと、そこから漏れ出る微かな光を描いた、極めて繊細な人間ドラマです。
誘拐事件の被害者と加害者
物語の軸となるのは、かつて世間を騒がせた誘拐事件の「被害女児」と「加害者」の再会です。
普通に考えれば、それは許されない接触であり、危険な兆候に見えるでしょう。
しかし、この映画は私たち観客に問いかけてきます。
「あなたが見ているニュースの真実は、本当にそこにあるのか?」と。
世間からの「可哀想な被害者」「異常な誘拐犯」という好奇の目。
その視線に晒されながら生きる二人が、再び巡り合ったとき、そこに生まれるのは恐怖なのか、それとも別の何かなのか。
この映画は、私たちが普段、無意識に他人をカテゴライズしてしまう危うさを突きつけてきます。
二人の関係性は、恋愛や友情といった既存の言葉では到底くくれない、名前のない結びつきです。
その歪(いびつ)でありながら純粋な絆の在り方に、心が強く揺さぶられました。
本屋大賞受賞の原作小説
本作の原作は、2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの同名ベストセラー小説です。
書店員さんたちが「一番売りたい本」として選んだこの物語は、多くの読者の心を震わせました。
小説という文字の世界で描かれた、繊細で壊れそうな心理描写が、映像としてどう表現されているのか。
原作ファンの方も多い作品ですが、映画版は小説の空気を大切にしつつ、生身の人間が演じるからこその「生々しさ」が加わっています。
文章で読んでいたあのヒリヒリするような感覚が、映像と音響によって増幅され、観る者の肌に直接触れてくるような感覚。
原作未読の方ももちろん楽しめますが、読了済みの方にとっても、新しい発見と感動があるはずです。
李相日監督の重厚な演出
メガホンを取ったのは、『フラガール』や『悪人』、『怒り』などで知られる李相日(リ・サンイル)監督です。
彼の作品を一度でも観たことがある方なら分かると思いますが、李監督は俳優の魂を極限まで削り出し、嘘のない感情を映し出すことに一切の妥協をしない監督です。
本作でもその演出手腕は遺憾なく発揮されています。
登場人物たちが言葉を発しない「沈黙」の時間にこそ、雄弁な感情が宿っているのです。
ただ立っているだけ、ただ歩いているだけのシーンに、張り詰めた緊張感と、どうしようもない哀しみが漂います。
安易なBGMで感情を誘導することをせず、風の音や雨の音、そして俳優の呼吸音で語らせる演出は、映画館で観ているかのような没入感をリビングにもたらしてくれるでしょう。
『流浪の月』の映像美と俳優の魂

ストーリーの深さもさることながら、この映画を「映画」として傑作たらしめているのは、圧倒的な映像美と、役者陣の鬼気迫る演技です。
特に、Amazonプライム・ビデオの高画質で観るならば、その映像の美しさは特筆すべきポイントです。
広瀬すずと松坂桃李の演技
主演の二人、広瀬すずさんと松坂桃李さんの演技は、これまでのキャリアの中でも「最高到達点」と言っても過言ではないかもしれません。
広瀬すずさんが演じるのは、過去の事件により「被害者」というレッテルを貼られ続ける女性。
彼女の瞳の奥にある、諦めと強さが入り混じった光は、観る者の胸を締め付けます。
一方、松坂桃李さんは役作りのために大幅な減量を行い、社会の片隅で息を潜めるように生きる男を体現しました。
その痩せこけた背中や、虚空を見つめる視線からは、彼が背負ってきた15年間の重みが痛いほど伝わってきます。
二人が対峙するシーンでは、セリフ以上の会話が交わされており、その空気感だけで涙が溢れてくるほどです。
パラサイトの撮影監督
本作の映像が持つ独特の質感、気付きましたか?
実は、撮影監督を務めたのは、あのアカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』などを手掛けたホン・ギョンピョ氏です。
彼が切り取る日本の風景は、どこか幻想的で、それでいて残酷なほどリアルです。
特に印象的なのは「水」と「光」の表現です。
雨の冷たさ、湖面の揺らぎ、木漏れ日の暖かさ。それらが登場人物の心情とリンクし、美しくも切ない世界観を作り上げています。
セリフで説明するのではなく、光と影のコントラストで物語を語るその映像美は、まさに芸術品。
自宅のテレビやタブレットで観ていても、その美しさに思わず息を呑む瞬間が何度もあるはずです。
横浜流星の意外な一面
そして、もう一人注目してほしいのが、横浜流星さんです。
これまでの「爽やかなイケメン」というパブリックイメージを覆す、強烈な役柄に挑んでいます。
彼が演じるのは、広瀬すずさん演じる主人公の現在の恋人役。
一見、彼女を愛し守ろうとする理想的な彼氏ですが、物語が進むにつれて見えてくる彼の「愛の形」は、見ていてヒリヒリするほどの歪みを含んでいます。
彼の演技は、単なる悪役とは違う、人間の弱さとエゴを剥き出しにしたものです。
「愛している」という言葉がこれほどまでに暴力的に響くことがあるのかと、背筋が凍るような感覚を覚えるかもしれません。
しかし、彼もまた、自分なりの正義と不安の中で必死にもがいている人間なのです。
この難役を見事に演じきった横浜流星さんの役者魂には、拍手を送らざるを得ません。
『流浪の月』で心に残る深い余韻
映画を見終わった後、すぐには立ち上がれないような、深く静かな余韻があなたを包むでしょう。
「ハッピーエンド」や「バッドエンド」といった単純な言葉では片付けられない、人生そのもののような結末。
それは、見る人の置かれている状況や価値観によって、希望にも絶望にも見えるかもしれません。
『流浪の月』は、私たちに「真実とは何か」「愛とは何か」という答えのない問いを投げかけてきます。
でも、その問いこそが、この映画を観る最大の価値なのです。
誰かと語り合いたくなる、あるいは一人でじっくりと噛み締めたくなる。
そんな忘れられない2時間半を、ぜひAmazonプライム・ビデオで体験してみてください。
今夜の映画選び、この作品を選んで後悔することはないはずです。
準備ができたら、部屋の明かりを少し落として。
二人の魂の彷徨(ほうこう)を、最後まで見届けてあげてください。
記事は投稿した当時、amazonプライムビデオで配信されていたものです。
現在配信されているか最新の状況は、必ずamazonプライムビデオサイトにてご確認をお願いします。


