ネタバレなし!映画『ある男』感想|愛と過去を巡る傑作ミステリー

ある男 ミステリー

「この映画、気になっているけれど、ハズレだったらどうしよう?」

「重たいテーマで、見終わった後に暗い気持ちになるのは避けたい」

Amazonプライム・ビデオのサムネイルを見ながら、そんな風に再生ボタンを押すのをためらっている方はいないでしょうか。

貴重な2時間を費やすなら、確実に心を動かされる、質の高い作品に出会いたいと願うのは当然のことです。

映画『ある男』は、まさにそんな「大人の映画ファン」の期待に真っ向から応えてくれる一作です。

タイトルが示すシンプルな謎から始まり、物語は予想もしない深みへと静かに、しかしスリリングに展開していきます。

派手なアクションや安易な感動ポルノではなく、人間の心の奥底を丁寧にすくい取るような上質なサスペンスを求めているなら、この選択は間違いではありません。

本作は、単なる謎解き映画にとどまらず、「人を愛するとはどういうことか」という根源的な問いを私たちに投げかけます。

見終わった後、世界が少し違って見えるような、心地よい余韻と深い思索の時間を約束してくれるでしょう。

ここでは、物語の核心や結末には一切触れず、この映画が持つ「映像体験としての質」や「役者たちの凄み」について、その魅力を余すところなくお伝えします。

【作品データ】

  • 主演:妻夫木聡
  • 共演:安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、柄本明 他
  • 監督:石川慶(『愚行録』『蜜蜂と遠雷』)
  • 原作:平野啓一郎
  • 上映時間:約121分

あらすじや作品情報など、正確な情報を記載するように注意しておりますが、何分個人で運営しているため、誤りや見落としがあるかもしれません。(特に上映時間は調べる先で1~2分違うので約〇〇分としています。)記事は、わたし個人の感想からきているものです。あらゆる基準がわたしの主観的な判断のよるものなので、ご了承の上、読んでいただけると幸いです。

石川慶監督作 愚行録(主演:妻夫木聡)のネタばれナシ感想はこちら

映画「ある男」のあらすじと世界観

タブレットで映画を観ている

物語の導入は、ある女性からの奇妙な依頼から始まります。

亡くなった夫が、実は「全くの別人」だったことが判明したのです。

愛していたはずの夫は、一体誰だったのか。

なぜ彼は過去を捨て、他人になりすます必要があったのか。

主人公である弁護士の城戸(妻夫木聡)は、この不可解な「ある男」の正体を突き止めるため、彼の過去を辿る旅に出ます。

調査が進むにつれて明らかになるのは、単純な事件の全貌だけではありません。

日本の社会構造の歪みや、個人が抱える逃れられない運命、そして差別といった重厚なテーマが、ミステリーという器を通して浮かび上がってきます。

あらすじだけを聞くと「社会派の重いドラマ」と思われるかもしれませんが、本作の語り口は非常に洗練されており、上質な海外ミステリー小説を読んでいるような没入感があります。

美しい映像と不穏な空気が同居し、観る者を冒頭からラストシーンまで画面に釘付けにするでしょう。

静かながらも、一瞬たりとも気が抜けない緊張感が持続するのが、この映画の独特な世界観です。

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妻夫木聡ほか豪華キャストの演技合戦

本作の最大の魅力の一つは、日本映画界を代表する実力派俳優たちが魅せる、火花散るような演技の応酬です。

言葉に頼らず、表情や佇まいで感情を語る彼らの演技は、スクリーンの隅々まで緊張感を行き渡らせています。

弁護士役・妻夫木聡の抑えた演技

主人公の城戸を演じるのは、『悪人』や『怒り』での熱演も記憶に新しい妻夫木聡です。

しかし本作での彼は、感情を爆発させるような演技をあえて封印しています。

彼はあくまで「調査する側」であり、観客の視点を代弁する冷静な観察者としての立ち位置を崩しません。

しかし、調査を進める中で、城戸自身の内面にも静かな波紋が広がっていきます。

妻夫木聡は、この微細な心の揺らぎを、ふとした視線の動きや背中の演技だけで雄弁に表現しています。

彼の抑えた演技があるからこそ、周囲のキャラクターたちの激しい感情がより際立ち、物語のリアリティを強固なものにしているのです。

キャリアを重ね、円熟味を増した彼の「受けの芝居」の凄みを堪能できるでしょう。

安藤サクラと窪田正孝の迫真の演技

亡き夫の正体に翻弄される妻・里枝を演じるのは、安藤サクラです。

『万引き家族』で見せた圧倒的な存在感は本作でも健在で、愛する人の嘘に直面した女性の悲しみ、戸惑い、そしてそれでも愛そうとする強さを、生々しいまでのリアリティで体現しています。

彼女がスクリーンに映るだけで、その場の空気が変わるような引力があります。

そして、謎の男「X」を演じる窪田正孝の演技も見逃せません。

過去を捨て、他人として生きることを選んだ男の孤独と影。多くを語らない彼の佇まいには、触れれば壊れてしまいそうな儚さと、底知れない闇が同居しています。

安藤サクラと窪田正孝、二人が織りなすシーンは、言葉以上の感情が交錯し、観る者の心を強く締め付けます。

彼らの演技を見るだけでも、この映画には十分な価値があると言えるでしょう。

原作・平野啓一郎が描く愛と過去

タブレットで映画を観ている

本作の原作は、芥川賞作家・平野啓一郎による同名のベストセラー小説です。

『マチネの終わりに』など、人間の愛や運命を深く考察する作品で知られる彼が、本作では「アイデンティティ」というテーマに挑んでいます。

「愛した人が、自分の知っている名前や過去を持たない人物だったとしたら、その愛は本物と言えるのか?」

この問いかけは、私たち自身の人間関係や、SNSなどで容易に自分を演出できる現代社会の在り方にも通じる鋭さを持っています。

映画版では、原作が持つ文学的な深みを損なうことなく、石川慶監督の手腕によって、映像ならではのサスペンスフルなエンターテインメントへと昇華されています。

原作未読の方でも問題なく楽しめますが、観終わった後には、きっと原作を手に取りたくなるような知的興奮を味わえるはずです。

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「ある男」は怖い映画?ジャンルを解説

「ミステリー」「正体不明」といったキーワードから、ホラー映画のような怖さを想像される方もいるかもしれません。

しかし、本作はいわゆる「怖い映画」ではありません。

お化けが出たり、過度に残虐なシーンが続いたりするような作品ではないので、その点はご安心ください。

ジャンルとしては「ヒューマンミステリー」と呼ぶのが最も適切でしょう。

謎解きの面白さはもちろんありますが、その根底に流れているのは、人間の業や悲しみ、そして救いについてのドラマです。

ただし、石川慶監督の前作『愚行録』にも通じる、ひんやりとした冷徹な視線や、人間の悪意を覗き込むような心理的な「怖さ」は存在します。

それは直接的な恐怖というよりは、知的好奇心を刺激されるスリルに近いものです。

美しい映像と音楽に彩られているため、不気味さよりも芸術性が勝っており、大人の鑑賞に堪えるシックな仕上がりとなっています。

日本アカデミー賞を席巻した評価の理由

本作は公開当時、そのクオリティの高さから批評家や観客の間で大きな話題となり、日本アカデミー賞では最優秀作品賞を含む数多くの部門で受賞を果たしました。

これほどの高評価を得た理由は、脚本、演出、演技、美術、音楽といった映画を構成する全ての要素が、極めて高いレベルで調和している点に尽きます。

特に、「自分とは何者か」という普遍的なテーマを、エンターテインメント性の高いミステリーとして描き切った手腕は圧巻です。

単なる謎解きに終わらず、観客一人一人の心に「あなたならどうする?」という問いを投げかけるラストは、長く記憶に残るものとなるでしょう。

Amazonプライム・ビデオでの鑑賞を迷っているなら、ぜひその背中を押させてください。

この2時間は、決して「消費」されるだけの時間にはなりません。

物語の幕が下りた時、タイトルの『ある男』という言葉が持つ本当の意味に気づき、静かな感動に包まれるはずです。

注意

記事は投稿した当時、amazonプライムビデオで配信されていたものです。
現在配信されているか最新の状況は、必ずamazonプライムビデオサイトにてご確認をお願いします。

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